安くて美味い人気店になる飲食店経営とは?

近年、食の安全性に関する問題がメディアでも大きく取り上げられたことなどから、ただ安いだけの飲食店ではお客さんの関心を引くことができなくなってきています。
安全性や品質を求めるとそのぶん、価格にも反映され、値段が高くなってしまうのは、当然ですが、各お店の努力により、低価格ながらも良い品質のメニューを提供できるようです。
今回、1杯250円で1日600杯以上を売り上げるラーメン店、国産の素材を使いながらも200円での提供を実現した東京都足立区のカレー専門店、一品100円のパン屋、大衆居酒屋の事例から格安かつ人気店になるための方法を紹介します。
格安でも行列のできるラーメン店、パン屋、カレー専門店。品質を落とさないコスト削減の工夫

①消費動向調査では外食費を減らす傾向が顕著に

最近の傾向として、外食産業全体への客数が減っているぶん、居酒屋やパブを除くファストフードなどの各業態は客単価を上げる方向にあるようです。
外食産業利用客数推移、客単価推移グラフ
では、一般消費者がそうした流れに乗っているかというと、実際の消費マインドは逆の方向に動いているようです。
内閣府の発表している消費動向調査「サービス支出DI」の推移を見ると、平成25年あたりから「レストラン等外食費を減らす」と答えた割合が大きく伸びています。

サービス支出DIの推移 内閣府 消費動向調査 結果 「サービス支出DI(二人以上の世帯、季節調整値)」より

外食費を減らす、ということは高いとそもそも行かない、あるいは頻度を減らす、ということになります。
また大手コンビニやスーパーがイートインを実施し始め、売上を伸ばしていることから、飲食店の競合相手は同業態だけにとどまらなくなっています。
そのため、値段が安くても、味が劣れば集客はできないのです。
では、どうすれば消費者にアピールできるほどの低価格で品質の良いメニューを提供できるのか?
実際に激安を実現し、かつ多くのリピーターをもつ人気店には次のような共通するポイントがありました。

②価格を落としても品質を落とさないために見直すべき3項目

  • (1)仕入れコスト
  • (2)店舗物件の入居費用
  • (3)オペレーションの効率、人件費
どの項目も飲食店を経営している方には当然のように見えるかもしれません。ただ、実際に行う場合には、これまで行っていたサービスの何かを捨てることが必要になってきます。
これから紹介する各お店は当たり前だと思われるサービスを切り捨てでも、それをプラスに変えるだけの品質を持っているということになります。
格安でも、これだけ美味しいものなら多少の不便さは気にならない、とお客様に思ってもらえる強みを磨くことが最大のポイントだといえるでしょう。

③格安でも行列ができる人気店の事例

都内に16店舗を展開する「晩杯屋」は、100円台が中心のメニュー構成。客単価は1300円ほど。食材は築地市場から仕入れ、「仲卸業者との信頼関係で仕入れコストを安く抑えている」(金子社長)「商品の質と値段にはこだわっているが、サービスには重きを置いていない」40席強の店舗であれば4人のスタッフで回す。注文は客がメモに記入し、店員に渡すシステム。
-日経MJ 16/7/25より(一部抜粋)

「晩杯屋」は仲卸業者と関係を築くことにより、仕入れコストを安く抑えるだけではなく、「注文は客がメモに記入し、店員に渡す」ことでオペレーションにかかるコスト、人件費を抑えています。通常の居酒屋やレストランではテーブルまで注文を取りにいくことが当たり前ですが、そのぶんの手間をなくすことで、余計な時間を削減しています。
もちろん、「商品の質と値段」へのこだわりがあるからこそ、一部のサービスがない、ことにはお客様も納得しているのだと思われます。

豚骨ラーメンの本場、福岡で県内に4店舗を展開する「18ラーメン」。本家「一九ラーメン」では450円の豚骨ラーメンを1杯250円でほぼ同様のものを提供している。スープは本家で作ったものを鍋ごと各店に配送。店内でスープを仕込まないため、若いアルバイトに運営を任せられる。立地にも安さの秘密がある。入居しているのは全てパチンコ店の中や駐車場。そのため、家賃が安く抑えられている。週末は1店舗あたり1日800杯強、平日でも600杯ほど提供されている人気の裏には、安さだけでなく、常連客の舌を納得させる「味」がある。
-日経MJ 16/7/25より(一部抜粋)

福岡県内では、他の地域に比べ豚骨ラーメンの価格は比較的安くなっていますが、それでも一杯250円は格安です。これを実現できるのは、仕入れにあたるスープを一括して本家で作ってから配送。若いアルバイトでも運営できるようにしているためです。また、立地もパチンコ店や駐車場といった家賃のかからない場所に集中。通常、「人が多く集まる」ところに出店すると家賃がそのぶん高くなるのですが、18ラーメンの場合は、それでも1日600〜800杯を売り上げることができるのは、「人を集める」味があるためといえます。

東京都足立区にある「カレーライス ゼイコミ200円」は原価率研究所が1月にオープンしたカレー専門店。
客の6〜7割がリピーター、9割を持ち帰り客が占める。平日は300〜400食、土日は700食あまりが売れていく。食材はすべて国産にこだわる。それでも低価格で提供できる背景には、徹底したコスト削減の工夫がある。
ルーは大手食品メーカーと共同開発。溶けやすいフレーク状のルーを採用し、「店員一人でも10分ほどで簡単に大鍋いっぱいのカレーを作ることができる」(同社)洗う手間を省くため、食器やスプーンは使い捨て。水やおしぼりは提供せず、店内にある自動販売機でミネラルウォーター(100円)などを買ってもらう。床や壁はコンクリート打ちっ放しで、テーブルやパイプ椅子も折りたたみ式の簡素なものを使用。出店費用は50万円ほどで済んだという。
-日経MJ 16/7/25より(一部抜粋)

「カレーライス ゼイコミ200円」も18ラーメンのように仕入れを誰でもできるように工夫しています。内装や家具にはこだわらず、さらに、食器やスプーンは使い捨て、サービスとして当たり前と思われている水さえも別売とし、国産食材を使ったカレーを安く売ることに徹底することで低価格を実現しています。

関東で12店舗を展開する「鎌倉ベーカリー」は約80種類の焼きたてパンを100円(税抜き)で提供する。1店舗当たり、1日に2500〜3000個を売り上げる。セントラルキッチンでのパン生地の製造や賃料の安い郊外への出店でコストを削減。さらにこだわるのは他の店舗跡地を活用する「居抜き出店」。内装は極力変えず、陳列棚やデイスプレーも既製品をうまく組み合わせて出店コストを抑えている。
-日経MJ 16/7/25より(一部抜粋)

店舗を運営する際に固定費の大きな比率を占めるものが、家賃、そして出店時には初期の店舗契約にかかる賃料、厨房設備類です。これを「居抜き出店」を利用することで安く抑えることで原価を下げることに成功しています。
居抜き出店の場合、他の居酒屋の例では通常出店に初期費用が3,270万円かかるところを275万円で出店できるといった大きなメリットがあります(出店初期費用例は店舗まるごと.comより。

「京都伊三郎製ぱん」長門石店(福岡県久留米市)では、約130種類の焼きたてパンがほぼ全品100円(税抜き)という安さ。近畿に3店舗、九州に18店舗を展開。1店舗当たり平均で平日は600人強、休日には1000人程度来店する。月1店舗のペースで出店を加速させている。
セントラルキッチンでパン生地やトッピングの材料を生産し、九州内の18店舗に冷蔵配送する。
冷凍パン生地では、「コストやオペレーション面では効率的だが風味や食感は劣る」(滝下信夫社長)
味にこだわり原価率は45%ほどと高い分、オペレーションは簡略化。店舗では届いたパン生地などを成型し、焼く作業のみ担う。会計ではレジに並ぶ前に客自身がパンを袋詰めする。
-日経MJ 16/7/25より(一部抜粋)

都内を中心に46店舗を展開する「大衆酒場かぶら屋」の定番は80円の焼きとんや80円からのおでんなど店内調理の低価格メニュー。標準的な店舗は13坪ほどの店内に35席前後を置き、4人ほどの店員で回す。テーブル会計をしなかったり、厨房を省スペース化したりと店員の無駄な移動を減らして運営の効率化を図る一方、店員は店内の隅々に気を配れる。「店づくりで一番重視するのは1人でも入りやすい静かな店の雰囲気をつくること」(内山社長)予約は取らず、常連客が毎日気軽に来られる環境をつくる。
-日経MJ 16/7/25より(一部抜粋)

「京都伊三郎製ぱん」、「大衆酒場かぶら屋」いずれもオペレーション業務を徹底的に簡素化しています。一般的なパン屋でいえば、お客様は商品を選んでトレイに載せ、レジで会計をするときに店舗スタッフが袋詰めする、ということが当たり前ですが、「京都伊三郎製ぱん」はそれを覆しています。また、居酒屋でいえば予約が取れて当たり前のところを、「大衆酒場かぶら屋」は予約は取らず、常連客が毎日でも来やすい雰囲気を作ることに徹底しています。スタッフによるオペレーション業務を簡素化していることで、お店の雰囲気づくりに徹することができるのです。

以上の例で見たように、仕入れコスト、出店時にかかる費用、オペレーションを簡素化、人件費を抑えることで低価格、高品質のメニューを提供することが可能になります。また、価格を下げるだけではなく、不要なサービスをなくすことでよりコアな部分に集中できるようになります。
特に少人数で多くのお客様を回さなければならない飲食店の場合、券売機のような機器を導入することで会計時の手間を省くことができます。
また、キッチンプリンターやキッチンディスプレイと連動し、券売機で注文ボタンが押されてすぐに厨房で内容を確認、調理に入ることができるようになります。
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